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Tim Buckley 「Goodbye And Hello」 ('67)

本作がリリースされた1967年というのは、その前年に The Byrds が 「Eight Miles High」 を、The Beatles が 「Revolver」 を発表するなど、サイケデリック・ロックの最盛期に突入した時代。今回紹介する 2nd アルバムは、そんな時代の影響を大いに感じさせる作品だ。

デビュー作で聞けたシンプルなフォーク・サウンドの延長にあるサウンドだが、インド音楽の旋律や霧がかかったようなSEを使うなど、サイケデリック・ロック/アシッド・フォークと呼ばれるような音が表出し始めている。また、オープニングから爆撃音のSEで始まるなど、ベトナム戦争への反戦運動の影響もあるようで、サウンドとともに Tim Buckley のヴォーカルもより内省的な歌唱へと変化。

Tim Buckley を語る上で欠かせないのは、そのサウンドの変化とともにあった、実験的とまで言える彼のヴォーカリゼーションの変容。絶唱と表現するに相応しい、圧倒的な声量をもって限界を超えていく歌唱は、この作品から始まっている。ヘビーなギターやオルガン・サウンドと呼応するように激しく歌い込む "Pleasant Street"、雪崩のようなギターとパーカッションに乗せて歌う "I Never Asked To Be Your Mountain" は、息を飲むほどスリリングな絶唱だ。茫洋としたSEが彼岸を感じさせる "Hallucinations" は、アシッド・フォークの名曲。デビュー作に収録されていても違和感のないフォーク・ソングである "Once I Was" も素晴らしく、作中でもこのM3~6までの流れは神がかっている。

9分近くあるタイトル曲も、シアトリカルに曲調や歌唱が変化していく様が聞けて面白い。本作の最後を飾るのは "Morning Glory"。この曲がまた素晴らしく、ティム・バックリィの歌声に加えて、聖歌隊のようなコーラスや抑制の効いた演奏が空間を静かに響き渡り、まるで自分が教会の中にいるかのように錯覚してしまう。本作を最高傑作とする人が多いのも納得できる。(試聴

   

by bigflag | 2009-01-29 23:06 | ・Rock / Folk  

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