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Moodymann 「Silentintroduction」 ('97)

不機嫌な男、Moodymann (ムーディーマン) こと Kenny Dixon Jr のデビュー作。リリースは、Carl Craig が主催する Planet E。デトロイト産のハウスは Moodymann の登場以前にも当然のことながら存在していたのだが、現在、デトロイト・ハウスと呼ばれるジャンルは、 Moodymann や Theo Parrish の登場以後のものを指して言う。つまり、本作はデトロイト・ハウスというジャンルを確立した記念碑的な作品であるということ。

KDJ の作るトラックというのは、とにかく個性がハッキリしていて、曲を聞けばすぐに彼の作ったものだと分かる。太いベース、重いキック、猥雑で物悲しいメロディなど、デビューしてから現在に至るまで、それらの特徴は常に一貫している。そして、デビューから10年以上が経過して分かったことは、このサウンドはKDJ にしか作りえないということ。似たようなサウンドはあるが、音の濃度がまるで違う。とにかく濃いのだ。しかし、決して特異な音楽というわけでもない。実のところ極めて真っ当なブラック・ミュージックと言える。一聴すれば、ゴスペル、ジャズ、ブルース、ソウル、ファンク、ディスコなど、アフロ・アメリカンが創造してきた音楽の延長線上にあることがすぐに分かる。ブラック・ミュージックのあまりに濃いごった煮音楽ゆえに、本当の意味でのフォロワーが出てこれないのだと思う。

本作は12"を集めただけのアルバムらしく、最近の作風に比べると非常にハウス・オリエンテッドな作りで、4つ打ちの曲がほとんど。"I Can't Kick This Feeling When It Hits"、"The Third Track"、"M Traxx"、"Music People"、"Sunday Morning" など、収録曲のほとんどがハウス・クラシック。"生演奏のようなグルーヴ" ではなくて、"生々しいグルーヴ" が KDJ の楽曲には備わっている。(試聴

by bigflag | 2009-02-17 23:42 | ・Club Music  

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