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Burial 「Burial」 ('06)

ダブステップというジャンル・イメージを決定づけた、Burial のデビュー作。ダブステップは、ドラムンベースやトリップホップ、2ステップなどから派生したものと言われているのだが、これらのジャンル名を見れば、ダブステップがUKのクラブミュージックの伝統的なラインのひとつに乗った音楽であることが分かる。

それではなぜ、本作がジャンル・イメージを決定づけるほどの力を持っていたのか。それは、他ジャンルとのクロスオーバー化が進みつつある現在のダブステップとは違い、本作のリリース当時、ダブステップとはUKのローカル・ミュージックだったことにある。すなわち、UKミュージックが一般的に持たれているイメージ(の一側面)と、Burial の音楽性の親和性が非常に高かったということ。その一側面とは、UKロックを聞く人にはイメージしやすいと思うが、イギリスには憂鬱で湿気のある音を鳴らすロックバンドが定期的に出てくる。UKロックの持つ大きな側面、つまりは、イギリスらしい憂鬱が Burial のデビュー作には凝縮されていたのだ。リリース当時、本作を絶賛していたのは誰か。Radiohead の Thom York である。

イギリスのクラブミュージックの伝統的なラインに乗りながら、UKロックとUKソウルを交差させた優れた音楽性もさることながら、本作 (次作 「Untrue」 も!!) が00年代の最重要アルバムの一枚たらしめているのは、聞き手を否応なしに引きずり込む Burial の暗い世界観にある。ひとつひとつの音やビートに深く刻まれた、思春期のような鬱屈とした記憶や感情はとても痛みを伴うものだが、暗い現実と向き合った凍てつく音のひとつひとつは誠実そのものだ。(試聴

   

by bigflag | 2010-04-11 01:10 | ・Club Music  

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