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2007年の漫画ベスト10

作者の名前順に思いつくまま10作品。

1. あだち充 「クロスゲーム」 (小学館 / サンデー / 10巻)

主人公・樹多村光と月島家の4姉妹を中心とする野球マンガ。内容は相変わらずなんだけど、これまでの集大成といった感じ。次女・若葉を失った喪失感が物語を貫く。若葉とそっくりの滝川あかねの登場で、若葉の影がいっそう登場人物を覆っている今の展開は上手すぎ。あだちマンガに通底する 「夏の終わり」 が胸に染みる。

2. 河合克敏 「とめはねっ! 鈴里高校書道部」 (小学館 / Yサンデー / 2巻)
がっかり帰国子女(笑)の縁と柔道部のホープである結希。この二人が部員不足で廃部の危機にあった書道部に訳あって入部する、という学園書道コメディ。この作者の作品を読んだのは、柔道マンガの名作 「帯をギュッとね!」 以来だから、本当に久しぶりだけど、相変わらず緩い空気が良い。あと、才能の原石の見せ方も上手い。海老塚桜子が二人いる、という感じか。

3. くらもちふさこ 「駅から5分」 (集英社 / コーラス / 1巻)

東京のとある街を舞台に、その街で暮らす人々、その街を訪れる人々の物語。エピソードごとの書き分けも面白い。ただ、物語にまだそれほどの強度はないので、それはこれからどうなるかってところ。前作 「月のパルス」 ではその辺があまり上手くいかなかったので、やや心配ではあるけど。
4. 島田虎之介 「トロイメライ」 (青林工藝舎 / 全1巻)
様々な国の人達の人生が、ヴァルファールトという一台のピアノの運命と共に動き出す。複数の小さい物語が一つの大きな物語に収斂していく構成は過去作と同じ。その手法も好きなんだけど、シマトラの魅力はやはり歴史の捏造にある。ヴァルファールトにしても、本当にあるとしか思えない。また、それは濃密な物語を作る力でもあるわけで、登場人物たちがこれまでに生きてきた時間、これから過ごしていく時間について、想像する楽しみがある。人生の豊かさを感じさせてくれる作家。サッカーネタが多いのもツボ。

5. 菅原雅雪 「暁星記」 (講談社 / モーニング / 7巻)

高度な科学文明を失い、生物にとって過酷な環境と化した、かつて金星と呼ばれた惑星で生きる人類と生物を描いたハードなSF漫画。6巻刊行時に7巻で完結と予告されていて、あと一冊でどう話をたたむのか心配していたら、やっぱり終わらなかったし(笑)、それで本当に良かった。「指輪物語」 や 「風の谷のナウシカ」 が好きな人は是非。

6. 惣本蒼 「呪街」 (講談社 / アフタヌーン / 1巻)

人里から遠く離れ、地図にも載っていない場所、月ノ見村。そこは特殊な能力をもった人たちが暮らす国家の保護施設で、通称"呪街"。そこで繰り広げられるサイキック・バトル漫画。超能力につきもののトラウマ満載で、かなりヘビーだけど、ストーリーはますます加速中。

7. 都留泰作 「ナチュン」 (講談社 / アフタヌーン / 2巻)

事故で知能の低下した天才数学者が発表した 「イルカの映像」 を見た、とある青年が人口知能の作り方を閃き、その映像を解読するため、沖縄の離島へ渡りイルカの生態研究を始める、という近未来SFストーリー。なんだけど、今のところ離島生活の日常が延々と描かれ続けている(笑)。迷作になりそうな気がしないでもないけど、面白いことには変わりない。

8. 三宅乱丈 「イムリ」 (エンターブレイン / コミックビーム / 2巻)

異世界における呪者と軍人の権力闘争を中心に描くSF物語。いずれは種族間の争いへと発展するはずだが、被支配者たちはいかに支配種族の記憶・歴史の捏造に抗するのか。連載開始からスリリングな展開は続く。

9. 吉田秋生 「海街dialy 蝉時雨のやむ頃」 (小学館 / フラワーズ / 1巻)

鎌倉に住む姉妹を中心とした物語。「ラヴァーズ・キス」 との繋がりも。吉田秋生の日常ものは作りがすごく丁寧で、感情の機微がすごく細やか。土地の持つ記憶まで伝わってくる。名作間違いなし。

10. よしながふみ 「フラワー・オブ・ライフ」 (新書舘 / 全4巻)

白血病を完治し一年遅れの高校一年生になった花園を中心に描く学園もの。よしながふみは、登場人物に自分の置かれた現実の遠慮ない思い知らせる方法、それと同時に登場人物が自身の存在を肯定させる方法、これらをストーリーの中に落とし込むのが本当に上手だよなあ。やおいものド真ん中の作品は苦手なので読まないんだけど、これなら大丈夫(笑)。

◆復刊◆
・松本剛 「甘い水」 (講談社 / 全2巻)

北海道の道東を舞台とした少年と少女の恋物語。繰り返し読みたくても、なかなか手に取れないほど重い内容ではあるが、思春期の閉塞感を描いたものとしては最も優れた作品の一つ。舞台設定とタイトルが秀逸。タイトルにまつわるシーンは泣ける。合わせて復刊された 「すみれの花さく頃」 「北京的夏」 も必読。また絶版にならないうちに入手して欲しい。

◆その他◆
少年サンデーで連載中の西森博之による 「お茶にごす」 、ヤングアニマルで連載の始まった羽海野チカの 「三月のライオン」 も期待。「三月~」 は 「ハチミツとクローバー」 を凌ぐ傑作の予感。「NARUTO」 は瞳術バトルばかりになりそうで不安もあるが (自来也も死んじゃうし・泣)、今のところ毎週楽しい。残念だったのは、「皇国の守護者」 の打ち切り終了。これは最悪だったことのひとつ。

by bigflag | 2008-01-12 19:56 | ・マンガ  

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