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カテゴリ:・Rock / Folk( 47 )

 

Gaby Hernandez 「When Love」 ('09)

Carlos Nino のプロデュースする Build An Ark や Dwight Trible & The Life Force Trio などの作品にヴォーカリストとして参加していた、Gaby Hernandez (ギャビー・ヘルナンデス) のデビュー作。無論、本作のプロデューサーを務めるのは Carlos Nino。そして、Phil Ranelin(tb) など、バックも Carlos Nino の人脈による馴染みの面子で固められている。

Carlos Nino のプロデュース作というと、ジャズやヒップホップといったイメージが強いけれど、本作はすごくシンプルなフォーキー・ソウル。線が太いとは言えない Gaby Hernandez の繊細な歌声を最大限に生かすには、こうしたシンプルな楽曲が最も適しているとの判断があったのだと思う。しかし、こうしたフォーク路線が意外かというと、実はそうでもない。Build An Ark の 2nd 「Dawn」 を思い出せばいい。あの作品は 1st と比べると非常に地味な作品ではあったものの、良作なフォーキー・ソウルだった。つまり、本作は 「Dawn」 の延長線上にあるサウンドと言える。

ハープ、ヴァイオリンなどの弦楽器が奏でる柔らかで幻想的なメロディと、シンプルで味わいのあるアコースティック・ギターやピアノのメロディが、アルバム全編を通して美しく交差しているのが非常に印象深い。そこにリバーブをかけられた浮遊感のある Gaby Hernandez の繊細な歌声がそっと添えられている。シンプルなサウンドにしたことで、本作に関わる人々のスピリチュアルな感性をより際立たせる結果になったのではないかと思う。聞き手の心にゆっくりと染み入るメロディがとても美しい作品。アルバムのジャケットもイメージ通り。(試聴



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by bigflag | 2009-11-28 10:43 | ・Rock / Folk | Comments(0)  

JAGATARA 「ごくつぶし」 ('89)

JAGATARA の 5th アルバム。本作リリースの一ヶ月後、1990年1月27日に江戸アケミが入浴中に事故死してしまったため、事実上、本作が彼らの最終作となった。メジャー・デビュー作となった 4th 「それから」 が8曲入りと、JAGATARA に変名以降では最も小品が並ぶ作品だったのに対し、本作は収録曲がわずか3曲。オープニングの "Super Star?" に至っては20分を越える長さで、大作志向の強い作品となっている。そして、「君と踊りあかそう日の出を見るまで」 に収録されていた、あの "Big Door" が遂にスタジオ録音されている。

収録曲の全てが、複数の曲を継ぎ接ぎに足されたような構成のため、せわしないというか分裂症的で、危なっかしい印象を受ける。ラテン・ミュージックを取り入れた "Super Star?" は新境地と言えるサウンドなんだけど、歌詞やメロディ含め、徐々にもの悲しく収束していくそのサウンドは、バンド活動の終わりを予見していたのかと思うほどだ。こうした不安定さを感じさせる楽曲を制作した時期に、"Big Door" を再演したのも必然のことなのかもしれない。本作の後、OTO を中心にして2枚の作品をリリースし、JAGATARA は正式に解散している。(試聴
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by bigflag | 2009-08-26 23:25 | ・Rock / Folk | Comments(0)  

JAGATARA 「ニセ預言者ども」 ('87)

前作 「裸の王様」 と同年にリリースされた 3rd アルバム。「裸の王様」 と本作の間には、「ロビンソンの庭」 という映画のサウンドトラックも制作しており、JAGATARA のバンド活動が最も活発になっていた時期で、この時期こそが彼らの最盛期と言えるだろう。

Fela Kuti の影響が顕著だった 「裸の王様」 と比較すると、アフロビート色はやや薄まり、ファンク・ロック色の強いサウンドへと変化している。ワンコードでひたすら疾走していた 「裸の王様」 にあった軽快さはなくなってしまったが、激しくアジテーションする江戸アケミのヴォーカルに表れているように、JAGATARA 史上最もアグレッシブな作品に仕上がっている。そんなアグレッシブな作品の最後を飾るのが、JAGATARA 史上最も壮麗な M4 "都市生活者の夜" という曲。

音楽と合わせて聞いてこそ意味のあることだが、"昨日は事実、今日は存在、明日は希望" というわずか3つのフレーズで、リスナーに対して、これほどポジティブな感情を喚起させる歌もそうそうない。人生において強い孤独を感じたことがある人ほど、この曲の持つ真摯な世界観に深く共感でき、また、込み上げてくる感情を抑えられなくなるはずだ。そんな人間が作った音楽だからこそ、M2 "みちくさ"(YouTube) における "お前の考えひとつで、どうにでもなるさ" という、ありきたりなメッセージでさえも力強く心に響く。
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by bigflag | 2009-08-23 22:40 | ・Rock / Folk | Comments(0)  

JAGATARA 「裸の王様」 ('87)

江戸アケミの精神病院への入院、そして退院を経てリリースされた 2nd アルバム。前作 「南蛮渡来」 も Fela Kuti の影響を感じさせる作品だったが、もっと大胆にアフロビートを取り入れたサウンドへと変化。それに伴い、全4曲で各々10分前後と、収録曲の全てが長い楽曲で構成されている。ギタリストのOTOによると、"曲の途中で飽きない、JAGATARA流アフロビートを作る"(要約) という構想があったのだそう。

その構想通りに、ノリが良く疾走感のある曲が3つ、オープニングからアルバムを駆け抜ける。曲こそ長いが、JAGATARA 史上、最もポップで軽快な作品と言える。ヤヒロトモヒロによるパーカッションの働きが特に大きいのだが、赤ん坊が聞いてさえ踊り出しそうな陽性のファンキー・ミュージックに仕上がっている。パーカッションに限らず、メンバーの演奏がかなり充実しており、ホーンやギターのソロやアンサンブルのことごとくが格好良い。他とはカラーが唯一異なる、レゲエを取り入れた "もうがまんできない" も江戸アケミ的な世界観の真骨頂のひとつ。



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by bigflag | 2009-08-20 22:20 | ・Rock / Folk | Comments(0)  

JAGATARA 「君と踊りあかそう日の出を見るまで」 ('85)

南蛮渡来」 リリースの翌年、1983年にバンドのフロントマンである江戸アケミは精神疾患を患ってしまい、精神病院に入院することになる。ただ、入院直前までバンド活動は続けていたらしく、本作はその入院前日の1983年のライブと、入院先から外出許可を得て行った1984年のライブを収録したアルバムとのこと。

全6曲で、前半3曲が入院直前のライブ、後半3曲が一時退院後のライブなんだけど、入院直前のライブが空恐ろしい。ブチ切れそうなテンションでの演奏と、前衛演劇のセリフのような江戸アケミの歌との落差がただごとではない。そうしたシアトリカルな歌唱を終始しているわけではないんだけど、何かが取り憑いてるとしか思えないそのヴォーカルは、聞き手に強烈な印象を残す。

そのような歌を傍で聞いてしまうと、やはり周囲にまで影響を及ぼすものなのか、メンバーの演奏が徐々に狂気を帯びてくるさまにも身震いさせられる。また、一時退院後のライブにて演奏された "少年少女" や "Hey Say" にしても、後の 「ニセ預言者ども」 や 「それから」 に収録されるスタジオ・バージョンよりもずっと良い。決して素晴らしい音質とは言えないが、聞いているうちにそんな些細なことは気にならなくなるほど聞き入ってしまう。



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by bigflag | 2009-08-18 23:09 | ・Rock / Folk | Comments(0)  

暗黒大陸じゃがたら 「南蛮渡来」 ('82)

暗黒大陸じゃがたらは、1979年に江戸アケミを中心として結成されたバンド。結成当初は江戸&じゃがたらと名乗っていたそうで、その後、改名を繰り返し、最終的に JAGATARA となる。本作が 1st アルバム。

僕と JAGATARA の出会いは、ナンバーガールが 「Sappukei」 をリリースした頃のインタビュー記事の中でのこと。どの雑誌かは忘れてしまったんだけど、"Urban Guitar Sayonara" が JAGATARA を想起させる、というようなことをインタビュアーが言っていたと思う。当時の僕といえば、ナンバーガールにドハマりしていたこともあって、その記事にすかさず反応して本作を手に入れた。

その記事の中で、JAGATARA は聞いたことがないと向井は答えていたが、ニューウェーヴの影響を感じさせる "Urban Guitar Sayanara" に、インタビュアーが JAGATARA の姿を見たとしても確かに不思議ではない。というのも、本作で聞けるサウンドは、いわゆるニューウェーヴ・ファンクで、Gang Of Four や Pop Group、James Chance など、パンキッシュなファンクをやっていた同時代のミュージシャンと共振するものだからだ。そう、JAGATARA は 「Num-Heavymetallic」 を20年早くやっていたのだ。

A Certain Ration や 23 Skidoo など、ブログで何度か取り上げているように、ニューウェーヴ・ファンクは個人的なツボということもあって、本作もまた大好きなアルバムのひとつなんだけど、JAGATARA に強く惹かれる理由には、そうした形式的なものを越えたところにある。それを言葉で表現するのは難しいことだが、それは音や言葉に込められた密度の濃さや熱量の多さのようなもので、それこそリスナーへ感染するほどに力強いエネルギーが JAGATARA の音楽からは放たれている。また、バンドのフロントマンである江戸アケミが発する言葉の数々はどれも鋭く、そして孤独だ。

そうした感染力のある熱のようなものは、オープニングの "でも・デモ・DEMO" を聞けば即座に感じることができるはず。江戸アケミの "あんた気に食わない" という一言に始まり、次いでバリトン・サックスが咆哮する曲の立ち上がりからして、その印象は強烈。また、つんのめるような性急なスピード感の中、Fela Kuti の "Zombie" から拝借したギター・カッティングを中心に形作るアフロ・グルーヴは、ギリギリのところで全てが成立している、このバンドならではの危うさを感じさせ、そこには江戸アケミのパーソナリティの一面が凝縮している。有名なフレーズである "日本人って暗いね" など、ヒップホップでいうところのパンチラインが一曲の中に何個もあり、江戸アケミによる歌詞のインパクトも非常に大きい。JAGATARA の場合、拙い言葉を尽くすよりも、その音を聞いてもらう方が遥かに早いので、ニコニコ動画にアップされたライブ映像を見てもらうのが一番良いかも。まさにカオス!!!(笑)

向井秀徳は、都市生活者の孤独を "冷凍都市の暮らし" というフレーズで繰り返し表現しているが、M4 "タンゴ" にもそれと共通するイメージを喚起させる。時代は移ろえど、そうした感覚というのは、さして変わらずに存在するということなのだろう。しかし、繰り返される音と言葉が呪術的な "クニナマシェ" を聞くと、江戸アケミというのは、ある種シャーマンに近い存在だと感じる。ダブ処理された音響も格好良い。その "クニナマシェ" のライブ映像を YouTube にアップした人がいることに、ついさっき気がついた。感謝。

   

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by bigflag | 2009-08-17 01:14 | ・Rock / Folk | Comments(0)  

Fleet Foxes 「Sun Giant」 ('08)

Fleet Foxes のデビューEP。「Fleet Foxes」 との2枚組仕様でもリリースされているため、1st を持っている人であれば、既に聞いている人も多いと思うけれど、本作も念のためにプッシュしておきたい。

Robin Pecknold は、作品を作るにあたり、明確なイメージを持って制作に臨む人だと思うんだけど、それはこのEPにおいても変わらない。アカペラのコーラスに始まり、使用する楽器を徐々に増やしていくというように、曲が進むにつれて作品の濃度が増していくような作りになっている。1st アルバムよりもシンプルなサウンドで、わずか20分程度の長さだが、それでも Fleet Foxes というバンドの魅力を十分に感じられるように趣向が凝らしてあるので、是非聞いてもらいたい作品だ。

   

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by bigflag | 2009-05-24 00:33 | ・Rock / Folk | Comments(0)  

Fleet Foxes 「Fleet Foxes」 ('08)

シアトル出身の5人組ロック/フォーク・バンド、Fleet Foxes による 1st アルバム。"バロック・ハーモニック・ポップ" と彼らが自称する通り、美しいコーラス・ワークと Bob Dylan や The Beach Boys をはじめとした1960-70年代のロック/フォークに影響を受けたサウンドに、近世ヨーロッパ的な雰囲気を憑依させた、コンセプチュアルな音楽を聞くことができる。16世紀のオランダ人画家、ピーテル・ブリューゲルの作品 「ネーデルラントの諺」 を採用したアルバム・ジャケットはとても印象的で、この絵が本作のイメージを決定づけている。

このバンドの強みは、健やかで美しいメロディを作れることもそうなんだけど、バンドのリーダー格でヴォーカルの Robin Pecknold が自身の声の魅力に自覚的なことにあると思う。声の持つ強さを知っているのだ。透明感を感じさせると同時に、一本の太い芯が通っている彼の歌声にはとても存在感がある。てらいのないストレートな歌い方も、彼の声質に適ったものだ。また、彼らのサウンドを特徴づける端正なコーラス・ワークと、箱庭のように再現された近世ヨーロッパ的な雰囲気との相乗効果も素晴らしい。作品のところどころに陽が射しこむような瞬間があって、その折々がとても感動的だ。

   

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by bigflag | 2009-05-22 00:52 | ・Rock / Folk | Comments(0)  

Glasvegas 「Glasvegas」 ('08)

グラスゴー出身の4人組ロックバンド、Glasvegas による 1st アルバム。容姿は The Clash の Joe Strummer を、声は U2 の Bono を彷彿させるヴォーカリストの James Allan の存在も話題を集めていた。Jesus & Mary Chain を引き合いに出されることが多いことからも分かるように、フィードバック・ノイズが終始鳴り続けているシューゲイザー・サウンドが Glasvegas の大きな特徴なんだけど、シューゲイザー系のロック・バンドとしては珍しく歌心がある。James Allan はウィスパー・ヴォイスでは歌わない。もうネチっこいくらいに高らかに歌い上げる。フィードバック・ノイズではなく、まず歌があるのだ。

この一点だけで、最近のシューゲイザー・フォロワーたちと一線を画している。それも狙ってやっているのではなくて、過去に好んで聞いてきた音楽を自分流に表現したら、結果としてそうなったという感じだ。俺は歌いたいんだ、という James Allan の気持ちがストレートに伝わってくる。Glasvegas のこうした率直さを愛す、というファンも多いのではないかと思う。この作品から聞こえてくる、古めかしくも懐かしいメロディは、そのどれもが歌心に溢れており、とても美しいものばかりだ。

   

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by bigflag | 2009-05-19 23:47 | ・Rock / Folk | Comments(0)  

The Ting Tings 「We Started Nothing」 ('08)

マンチェスター出身の Katy White (Vo/G) と Jules De Martino (Dr) によるロック・ユニット、The Ting Tings の 1st アルバム。ツラの良い男女二人によるイギリスのポップ・バンド、というだけでスルーしていたんだけど(笑)、これが聞いてみると予想外に良かった。とにかく底が抜けたように全曲がポップ。

曲も良いんだけど、Katy White のヴォーカルが好き。こういうおバカな感じで、かわいげのある女の子の声って、無性に聞きたくなるときがある (女の子という歳でもなさそうだけどw)。フラットでリズミカルなヴォーカルも今っぽい。スカスカのサウンドと頭スカスカそうなヴォーカル (実際はそんなことないんだろうけど) を組み合わせた "That's Not My Name" なんか最高で、Ting Tings といえばコレ、という存在感のある曲だ。

前述の "That's Not My Name" やキュートなワルツ・ポップの "Traffic Light" などを聞くと、どれも凝ったリズムというわけではないんだけど、ドラマーのバンドだということが非常によく分かる。また、どの曲も潔いほどシンプルにまとめられている。あと、"Be The One" や Nirvana の "Smells Like Teen Spirit" をモロ使いしたタイトル曲などで聞ける、インディ・ロックへの率直な愛情も個人的にはツボ。ティーンズだけのものにしておくには惜しい一枚だ。

   

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by bigflag | 2009-05-11 23:34 | ・Rock / Folk | Comments(2)