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カテゴリ:・学習塾( 41 )

 

講師とコソ泥 ~その12~

「お兄さん、こんなに朝早くに行ったらアカンで」

友人とM君の母親、双方の事情を一通り聞き終わった後、眠そうな顔をした警官は、
21時から翌日8時までは取り立てをしてはいけないという規制(ガイドライン)があるのだと、
友人に説明した。

M君の母親はおそらくこのことを知っていたのだ。だから、すぐに警察へ行こうと言い出したの
だろうし、いま思えば、その交番までの行き方も、公園に入って近道をするなど、なんだか妙に
慣れた足取りだった。が、それよりも何よりも交番で話し合いをしていた時のことである。
尿意を催した友人が警官にトイレはどこかと尋ねたところ、警官ではなく、なぜかM君の母親が
突き当たりの右よ、と教えてくれた。親切心からなのか何なのか全く意味が分からなかったが、
友人は用を足しながらこの時に確信した。M君の家が取り立てに遭っていること。
そして、M君の母親がその取り立ての件で、この交番にお世話になっていることが一度や
二度ではないことを。

警官は友人とM君の母親、そのどちらかの味方をするということもなく、友人に対しては
「もう少し待ってあげたら」 と言い、M君の母親に対しては 「ちゃんと払ってあげなさいよ」 と言い、
話し合い中ずっと、それらの言葉尻を変えただけの同じような言葉を何度も繰り返すだけだった。
ここで話し合いを続けても、何も進展がないと悟った友人は、今日はもう時間がないので、
と言って、その場を後にした。

その帰り道、友人は閉塾することを決めた。この一件で決意したというよりも、
自分のことを棚に上げて、何でもかんでも他人 (学校・塾・父親) のせいにする傾向が
強い母親と向き合わなければならない、この塾講師という職業に割の合わなさを以前から
常々強く感じていたのだ。

もう塾を閉めるわ。その言葉を友人から聞いた時、もっと頑張れよ、という言葉は出てこなかった。
ブログのタイトルに期待を込めて入れた長征とまで行かなかったことは、残念は残念だったのだが、
始めた動機が動機だったので、よくここまで続いたなあ。という気持ちの方が強かったからだ。
浅はかな思いつきで始まった友人Sの学習塾経営は妥当と言うべきなのか、2004年3月から
2005年5月の1年3ヶ月という短い期間で、あっさりと終わったのだった。
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by bigflag | 2006-04-03 13:02 | ・学習塾 | Comments(6)  

講師とコソ泥 ~その11~

友人がM君の家に着いたその時、身支度を済ませたM君がちょうど扉を開けて出てきた。

M 「こんな朝早くにどうしたん、先生?」
S 「ちょっとお母さんに用があってん。電話通じんから来たんよ。お母さん、まだおるか?」
M 「おるで」
S 「お母さんはいつも何時頃に家を出はんの?」
M 「9時くらいやったと思う」

時間に余裕があったので、友人は授業料の催促は後回しにして、M君がJ君らと待ち合わせ
している場所まで一緒に行くことにした。歩き始めて3分後くらいだろうか。背後から奇声が
聞こえてくるのだ。何事かと振り向くと、M君の母親が物凄い形相で走ってくるではないか。

母 「あんた、息子に何するつもりや?」
S 「えっ? 試験に出そうな問題の復習をしてただけですよ」
母 「こんな朝早くに一体どういうつもりなんよ。常識ないんちゃうの?」
S 「電話しようにも電話は通じないですし、お母さんは夕方まで働きに出てるし、こっちかて
  夕方からは授業があるんですよ。好き好んでこんな時間に来てるわけじゃないんです。
  僕のこと常識ないて言いますけど、塾に通っていて、その授業料を払わない方が、
  もっと常識がないんとちゃいますか? 授業料は一体いつ払って頂けるんでしょう?」
母 「ちょっと待ってって何回も言うたでしょ?」
S 「それ何回も言うべきことやないんちゃいますの?」
母 「ほんまに息子に何もしてないんやろうね?」
S 「質問はしましたよ」
母 「どんな?」
S 「始めに言うたでしょ。試験に出そうな問題を復習したって。話をすり替えんといてもらえますか?」
母 「ここでは何やから、警察行って話しましょか?」
S 「別に良いですよ」
母 「あんた(M君)はさっさと学校行き!」

「ここでは何やから」 の後は 「ウチで話しましょう」 と続くかと思っていたら、いきなり警察に
行くことになる急展開だった。第3者がいた方が冷静に話は出来るか、と思った友人は、
M君の母親に連れられて、最寄りの交番に行くハメになってしまったのだった。
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by bigflag | 2006-03-30 00:37 | ・学習塾 | Comments(2)  

講師とコソ泥 ~その10~

M君に対しては同情を感じてはいたが、固定電話を止められているにもかかわらず、
授業の合間に携帯電話で呑気にゲームに興じているM君の姿を見ると、取り立てに
あっているとはいえ、授業料を払おうと思えば払えるだろう、という思いが先に立つ。
滞納といっても、友人の塾の場合、たった1ヶ月分だったので、金額にすればせいぜい
2~3万円程度のことなのだ。どう考えても、息子2人の携帯電話の解約が先だろう、と。
ついでに言えば、兄弟割引もしてるぞ、と。

しかし、授業料を払わないことはもちろんだが、それよりもM君の向こう側に見える、
どうせ取り立てには来れないだろう、という学校や塾に対してナメた態度を取る
M君の両親に友人は怒りを感じていた。タチの悪い輩に引っ掛かったと思って
さっさと諦めることも考えたが、面と向かって授業料を催促に行くのも経験かと思い、
再びM君の家へ行くことにした。どのみち電話は相変わらず不通状態だったので、
家に行くしか友人には選択肢はなかった。

両親ともに働きに出ていると、M君からは聞いていたので、登校前の時間であれば、
母親は家にいるだろうと考え、午前8時前後にM君の家へ着くように友人は自宅を出た。
また、その時は定期テスト中でもあったので、登校前のM君に軽く声をかけるつもりだったのだ。

しかし、友人のこの行動がまたひとつ災難を招いてしまうのだった。。。
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by bigflag | 2006-03-28 23:23 | ・学習塾 | Comments(0)  

講師とコソ泥 ~その9~

取り立てにあっているM家に授業料の支払能力があるとはさすがに思えなかったので、
今月分の授業料を今週中に払えないようなら、辞めてもらうしかないと考えた友人だったが、
取り立てという少しショッキングな事実を目の当たりにしたせいか、その日と翌日はM君の家に
電話することを躊躇してしまっていた。

今日は言おう、何度かその言葉を反芻させてから、M君の家に電話すると、母親が出た。
授業料の催促だと分かると、「もう少し待ってくれと前に言いませんでした?」 と愛想の欠片も
ない声でそう返事をしてきた。この言葉にキレそうになったが、そこは抑えて、いや抑え切れ
なかったために 「ここは学校ではないんですよ」 という言葉がつい出てしまった。
言葉のを理解したのか、一瞬の間が空いた後、 「とにかくあと少し待って下さい」 を
捨てゼリフにして、M君の母親は一方的に電話を切ってしまった。

「あと少し」 という、このたった4文字の言葉の解釈が、M君の母親と自分とでは
全く異なっていることは分かっていたけれど、友人はそれから3日後に再びM君の家へと
電話を入れた。すると、受話器から聞こえてくるのはM君の母親の不機嫌な声ではなくて、
「おかけになった電話は、お客様のご都合により、お繋ぎできません」 というアノ声だった。
次の日も、その次の日もまた、友人はそのアナウンスしか聞けずにいた。

その数日間で、学校と塾2つに続き、電話料金も不払いであることが発覚したのだった。。。
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by bigflag | 2006-03-28 00:50 | ・学習塾 | Comments(2)  

講師とコソ泥 ~その8~

入塾申込書に書かれた住所が嘘でなければ、塾からM君の家まではそれほど
遠い距離ではなかったこと、その日が小春日和の心地良い天気だったこともあり、
友人は散歩気分で歩いて向かうことにした。

M君の家までは20分もかからずに着いた。素性の知れない人間がアカの他人の家を
じっくりと観察していれば、通報されかねないこのご時世なので、友人は立ち止まって
見ることは避けて、歩みを極端に緩めてM君の家を観察することにした。
パッと見た家の外観は学校や塾の授業料を滞納している家にはとても見えなかった。
ごくごく普通の建て売りの一軒家である。

しかし、ほんの3歩か4歩だろうか。距離にしてわずか3メートルほど歩いただけで、
その印象はスッ飛んでしまった。小春日和の心地良さとは真逆の光景が友人の目に
飛び込んできたからだ。これまで見たことがないほどに傷を負った車が車庫にはあったのだ。
オカマを掘ったり掘られたり、コスったりコスられたり、というような事故の傷ではない。
何者かがコインや何かで傷をつけたような明らかに人為的な傷である。
そして、その傷は車のフロント付近に固まっており、平凡な日々を壊すには十分な数だった。

そう、M君の家は金貸しからの取り立てにあっていたのだ。
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by bigflag | 2006-03-25 22:42 | ・学習塾 | Comments(2)  

講師とコソ泥 ~その7~

M君が3ヶ月目の授業料を滞納し始めてから2週間が経った頃、先月と同じように家へと
電話を入れたところ、M君の母親は 「突然の出費が重なっていたんです。申し訳ありません。
週明けには息子に持って行かせますので」 と滞納の理由を説明した。その説明を信じたわけ
ではなかったが、友人は待つしかないなと思い、「分かりました」 とだけ言って電話を切った。

しかし、それから一週間が経っても結局、M君が授業料を持って来ることはなかった。
このことは友人にとって腹こそ立てど、いわば想定の範囲内の出来事だったので、
特に驚きはしなかったのだが、そんなことよりもM君の家族は、いったいどのような生活を
送っているのかが気になり始めた。

トンデモないボロアパートに住んでるんやろか。いや、でもM君はいわゆる郊外の
ニュータウンと言われるような場所に住んでんだから、そんなことは絶対にないはず。
家を買えるくらいの収入はあるってことやし。んー親父が失業してしまったんやろか。
でも、入塾の時に書いてもらった父親の職業欄には会社員って書いてたよなあ、たしか。
それも過去の話となってしまったのか、あるいはハナからそれも嘘なのか。

友人はそんな下世話な想像を一通りした後、とりあえずM君がどんな家に住んでいるのかを
見に行ってみることにした。まさか嘘の住所とちゃうやろな。。。もう一度だけ下世話な想像を
してから、重くなった腰を上げてM君の家へと向かった。
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by bigflag | 2006-03-23 00:04 | ・学習塾 | Comments(2)  

講師とコソ泥 ~その6~

学校の授業は面白くない。これを授業料不払いの理由にしていたM君(家)だが、
M君が入塾して3ヶ月もした頃、授業料を支払わない本当の理由が判明した。
「ウチには金がない」 というM君の口癖は本当だったのだ。携帯電話の件を考えると、
お金の使い方を知らないだけかもしれないが・・・

1ヶ月目の授業料は支払日にお金を持ってきたM君だったのだが、2ヶ月目には早くも
授業料の支払いが滞った。その時は 「オカンが金を下ろし忘れた」 というM君の言葉を信じて
いたのだが、それから一週間経っても授業料を持ってこないので電話で催促をしたところ、
M君は授業料を持って来たのだが、それは支払日から2週間が経ってからのことだった。

学校の授業料を払っていないこと、お金がないという口癖を知っていただけに、少々不安になった
友人はあまり気が進まなかったのだが、「M君にK塾に授業料を払っているのかどうか」 を
それとなく聞いてくれないかと J 君に頼んだ。

翌日、学校が終わってから自習をしに来た J 君は教室に入ってくるなり、こう言った。
「M君、K塾にも授業料を払ってないらしいで」

不安が増したというよりも、友人はこけた。ズコーである。息子を通わせている塾に授業料を
支払わないM家もM家だが、授業料を支払わない生徒に授業を受けさせているK塾もK塾だ。
授業を聞かずに寝ているだけだから許しているのだろうか。あるいは、生徒の人数が
少な過ぎると不安に思う子供や親が出てくるので、頭数を確保するためだけに(*)
M君を置いているのかもしれない。(* K塾の生徒数は多くない)

Xデーは3ヶ月目のことだった。そして、この月の授業料は今も支払われないままである。。。
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by bigflag | 2006-03-22 00:42 | ・学習塾 | Comments(0)  

講師とコソ泥 ~その5~

公立高校と私立高校に行った場合の授業料の差(*)について話していた時のこと。
それまで大人しく聞いていたM 君が唐突に口を開いた。(*年間約30~40万円弱違う)

「俺んち、学校に授業料なんか払ったことないで。あんなもんは払わんでええねん」

M 君のその言葉に、S も含めて教室にいる全員が引いていた。
以下、その後の会話のやり取り。

S 「なんで払わんねんな。授業受けたり、給食食ったりしてるんやろ」
M 「だって払わんでも、たいして何も言われんねんもん」
S 「払えて言われんから払わんの? 払いたくない理由が何かあるんちゃうの?」
M 「だって学校に金払うほどの価値ないやん」
S 「じゃあ、なんで払う価値のない場所に毎日わざわざ早起きして行ってんの?」
M 「…まあ、友達おるし、部活には行きたいねん」
S 「それは金を払う価値があるってことちゃうの?」
M 「…でも、金を払いたくなるような授業はないやん」
S 「せめて部活と給食の分だけでも払ったらええやん。そんな払い方あるんか知らんけど」
M 「前にも言ったけど、ウチ金ないねん」
S 「君ら兄弟の携帯代を授業料に回したら払えるやろ、確実に」
M 「これはイザという時のために必要やねん」
S 「M 君のイザって、どんな時やねん」
M 「最近、物騒な世の中やん」
S 「授業料払えって、怖いオッサン来るかもしれんもんな」
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by bigflag | 2006-01-09 12:09 | ・学習塾 | Comments(4)  

講師とコソ泥 ~その4~

毎月の携帯電話の利用料が常に1万円Over らしい M 君兄弟。にもかかわらず、M 君の口癖は
「ウチには金がない」 である。親の収入が少ないために金がないのか、無駄遣いが多いために
金がないのか、どちらが本当なのか、もしくは両方なのかは分からないが、とにかくそうなんだ。

また、M 君にはもう一つ口癖がある。それは、「みんなに悪口を言われている気がする」 だ。
大げさに言えば、被害妄想癖というやつだろうか。J 君たちに聞くと、物事が上手く行かない時の
M 君流の決めゼリフらしい。塾では、こんなシチュエーションの時に口走っていたそうだ。
英単語の暗記が出来なかったり、読めない意味の分からない漢字が多い国語の文章問題に
煮詰まったりした時なんかに。みみっちい話である。M 君は下手に良いガタイをしているだけに、
余計に情けなさを感じさせるのだ。と思えば、ひどく強気な時もある。が、その強気な時の
ロクでもない話はまた今度。

これまで入塾してきた生徒とは違い、M 君は素直さが欠ける屈折した性格なので、
学力向上の面でも、人格矯正の面でも、前途に少々の不安を覚える友人であった。
ちなみに小6の弟は今のところ素直な少年らしい。
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by bigflag | 2005-11-10 22:44 | ・学習塾 | Comments(2)  

講師とコソ泥 ~その3~

M 君に仮入塾にしてもらって2週間が経ったある日、M 君の母親から電話が入った。
息子をよろしくお願いします、という電話だ。ただ、話を聞いてみると、いま通っているK塾にも
引き続き通うらしい。昼寝の場所が欲しかった M 君と2つの塾へ息子を通わせることで
安心感が欲しかった母親との思いが一致したのだろうか。とりあえず、M 君の入塾が決まった。
ついでに M 君の弟の入塾も決まっていた。

M 君は寂しがり屋なのか何なのかよく分からないが、とにかく誰かに構われたいらしく、
暇を見つけては隣近所にいる人間にちょっかいを出したり、喋りかけたりする。嫌な人間という
わけではないので、J 君ら友達にはいつも鬱陶しがられているわけではないようだが、
時として鬱陶しいと思われているようだ。M 君本人はその辺に気付いているのかいないのか、
とにかく空気を読めるタイプではない。

そんなM 君が入塾して一週間ほど経った頃、誰も聞いていないのに兄のことを話し始めた。

M 「俺の兄貴は中卒で働いてるねん」
S 「ふーん。どんなトコで働いてんの?」
M 「今はプータローやわ」
S 「それ働いてるて言わんがな」
M 「最近までは働いとってん」
S 「中卒でプラプラしとんかいな。プラプラするくらいなら高校行ったら良かったのに」
M 「兄貴は成績良かったから、行こうと思えば良い高校に行けたんやで」
S 「じゃあ、何で高校行かんかったんよ?」
M 「俺ん家、お金ないねん」
S 「ほんまかいな。M 君は2つも塾に通ってるやん。それで金がない訳ないやろ」
M 「嘘やないで。ほんまに金ないねんて」
S 「( 冗談ぽく ) 兄貴も M 君と同じくらい成績悪いんちゃうの?
   このままやったら、兄貴みたいに行く高校ないで」
M 「いやいやいや!! 俺とは違って成績良かったんやって!」
S 「( 引き続き冗談ぽく ) 兄貴みたいに中卒で働きたくないなら、勉強もっとせなアカンで」

その日、金がない金がないと連呼していた M 君だったが、休み時間を向かえると、
彼は手馴れた様子で携帯電話を扱っていたのだった。次の日に来た弟もまたそうだったんだ。
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by bigflag | 2005-10-18 22:49 | ・学習塾 | Comments(0)