2009年の音楽ベスト Vol.1
音楽に限らず、様々なものがタコツボ化していると言われて久しいが、網の目のように並んだタコツボに小さな抜け穴のようなものが出現しはじめているように感じるのが、昨年というかここ数年の音楽を通じて得ている印象。そうした音楽は例えば 6,7,8,9 のように、ミュージシャン個々によるコラボレーションなどを通じて、国境を易々と超える音楽のクロスオーバー化が見られ、また、そのサウンドが無国籍ながらも均質化していないところに特徴がある。エスニックなメロディを面白がるという態度はもはや過去のもので、無国籍なグルーヴが血肉化している。ボーダレス/ジャンルレスでこうした潮流が生まれるところに、現在の音楽の面白さがある。
◆Best 10◆
1. Andres / Andres II
デビュー作から6年ぶりとなった 2nd アルバム。Moodymann プロデュースによる、虚と実の狭間を彷徨う官能的なビートとメロディは健在。年末に滑り込みでランクイン。これぞブラック・ミュージックの坩堝。2009年のベスト・ソウル!
2. Animal Collective / Merriweather Post Pavilion
Panda Bear の 「Person Pitch」 をバンドでやった感じで、「Strawberry Jam」 の行き過ぎた躁状態が中和されたのが個人的には良。"God Only Knows" のような曲を作りえない(作ろうとしない?)バンドの作品に対して、「Pet Sounds」 を引き合いにする評価はちょっと違うだろうという思いもある。
3. Atlas Sound / Logos
Deerhunter のヴォーカリスト、Bradford Cox による 2nd アルバム。ローファイでパーソナルな楽曲に挟まれた、Noah Lennox や Laetitia Sadler との共作曲が素晴らしい。2009年のベスト・ロック!
4. Dam-Funk / Toeachizown
プリンスの初期作や Zapp 周辺の80sエレクトロ・ファンクをアップデートしたデビュー作。オブラートに包んではいるが、これぞファンクというエロティシズムがサウンドに滲む快作。ジャケットの強面に似合わず、キラキラとしたキーボード主体のサウンドもロマンティック。2009年のベスト・ファンク!
5. Gaby Hernandez / When Love (レビュー)
2009年のベスト・フォーク!
6. Jimi Tenor + Tony Allen / Inspiration Information Vol. 4
近作でアフロ・ミュージックに接近してきたジミ・テナーが、アフロビート本家のドラマーであるトニー・アレンと遂に邂逅を果たしたコラボ作。Kabu Kabu との 「4th Dimension」 も良作だった。2009年のベスト・グルーヴ!
7. Luciano / Tribute To The Sun
2008年にリリースしたミックスCD 「Fabric 41」 でみせた、あの開いていくような感覚を自身のオリジナル作でも披露。トライバル色の強い冒頭の3曲がインパクト大。2009年のベスト・テクノ!
8. Major Lazer / Guns Don't Kill People : Lazers Do
気鋭のプロデューサーDiplo と Switch による、ダンスホール主体のマッシブなエレクトロ・レゲエ。ここまでジャンクだと笑うしかない。ジャケット通りのマンガ的世界。ハマるとメチャ楽しい。2009年のベスト・レゲエ!
9. Mulatu Astatke + The Heliocentrics / Inspiration Information Vol. 3
サイケデリック・ロックとヒップホップ通過後のジャズをかけ合わせたような音楽を作っていた Heliocentrics と、エチオピアのジャズ・ミュージシャンであるムラトゥ・アスタトゥケによるコラボ作。ムラトゥによるエキゾなメロディが、バンドのグルーヴをより濃厚で雄大なものへと進化させた。2009年のベスト・ジャズ!
10. Prefab Sprout / Let's Change The World With Music
名作 「Jordan: The Comeback」 の翌年93年に録音したものを再構築した、8年ぶりの新作。時空を超えた珠玉のポップス、であることが引き裂かれるように悲しい作品。2009年のベスト・ポップス!
Vol.2 に続く・・・
by bigflag | 2010-01-11 23:01 | ・音楽 - 年間ベスト