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Such A Funky Thang! -久保田利伸を語る- Vol.8

久保田利伸がアメリカ・デビューを果たした1995年、ブラック・ミュージックにおける革新がまたも起こります。D'Angelo の登場が決定打となった、ニュー・クラシック・ソウル(オルタナティブ・ソウル)と呼ばれるムーヴメントです。NCS という名称からも分かるように、70年代のニュー・ソウルをアップデートしたサウンドでした。打ち込みによるサウンドが主流となっていたため、生演奏が多用された D'Angelo の楽曲は、オルタナティブと呼ばれたわけです。D'Angelo 以前にも、Tony Toni Tone など生演奏を多用するグループがいましたが、ヒップホップのビートには対応できていなかったため、サウンドに強いインパクトがなかったのです。

D'Angelo の登場を用意したのは、A Tribe Called Quest や The Roots という、生演奏のグルーヴを重視したヒップホップ・グループの存在です。事実、D'Angelo のデビュー作である 「Brown Sugar」 には、ATCQ の DJ である Ali Shaheed Muhammed や、グループのミキシング・エンジニアだった Bob Power が関わっており、重要な役割を果たしたと言われています。また、完全な生演奏でヒップホップのリズムを再現してみせたバンド、The Roots は D'Angelo の 2nd 「Voodoo」 で起用されています。

左下が ATCQ の "Jazz (We've Got)"('91) で、右下が The Roots の "Silent Treatment"('94) です。彼らが創出した生のビート感は、ニュー・クラシック・ソウル(オルタナティブ・ソウル)とカテゴライズされるミュージシャンに大きな影響を与えました。

   

D'Angelo のデビュー曲である "Brown Sugar" や "Shit, Damn, Motherfucker" を聞けば、生のヒップホップ・グルーヴをまとった、新たなソウル・ミュージックが提示されたことを追体験できると思います。とはいえ、D'Angelo の音楽の真髄は、そうしたグルーヴの新しさもさることながら、生々しいエロスを歌とリズムに乗せたことにあるように思えます。特徴的な、まるで舐めるようなベースラインなど、とにかくエロいのです(笑)。今回紹介した NCS やヒップホップ・ソウルを自身の音楽へ落とし込むことに、久保田利伸は試行錯誤し始めるのです。

   

by bigflag | 2010-05-15 08:19 | ・久保田利伸を語る  

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