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Caetano Veloso 「Muito」 ('78)

自分の母親に膝枕をしてもらっているという、マザコン丸出しのアルバム・ジャケが、見ていて少し恥ずかしくなるものがあるんだけど、とても静謐で叙情的な名盤。カエターノ・ヴェローゾは、MPBと言われる現在のブラジルのポップ・ミュージックの原型を作った中心人物の一人で、ブラジルのボサノヴァ、サンバなどと欧米のロック、フォーク、サイケ、フュージョンなんかをポップ・ミュージックの枠内 (時にはみ出すことも) へと見事に落とし込んだ音を聞かせてくれる。

M1 「Terra (地球)」 は、曲名を 「Dear Mama」 とでも付けたかったんだろうけど、ちょっとだけ抽象的に「母」を「地球」に置き換えたんだろう。「母なる地球」って言うもんな。ブラジルでもそう言うのか知りませんが。曲はというと、カエターノの胎内回帰願望をベースに、内宇宙の中心を目指して、カエターノの蕩蕩とした歌声にシタールの音などが、ゆっくりと重なっていく。膨張する宇宙というよりは、収縮していく宇宙といった趣きの曲だ。1曲目で胎内回帰願望を満たしたカエターノは外へと出てる。他の誰よりも遅く歩きながら、街の様子や思い出をカエターノはボソボソと語り始める。語りの裏では、「星の青い輝きの中」 という意味の名を持つバンド、オウトラ・バンダ・ダ・テーハが音を奏でる。その音は、エレピを筆頭にほんの少しだけフュージョンの味付けがなされており、非常に心地がいい。

このアルバムを出した当時のカエターノは36歳。36歳であのジャケ写を撮るのは、勇気があるというか何というかw。それと2PACの「Dear Mama」にしてもそうなんだけど、男のマザコンが思いっきり表に出た曲ってのは、メロディーが非常に甘いですよね。そういえば、女性のファザコンが表に出た曲って知らないなあ。カエターノは多作なミュージシャンなので、とても全作品は聞いてませんが、亡命から帰国した後に発表している70年代のアルバムに好きなものが多い。(試聴

by bigflag | 2005-01-16 16:28 | ・Brasil / Africa  

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