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講師とコソ泥 ~その8~

入塾申込書に書かれた住所が嘘でなければ、塾からM君の家まではそれほど
遠い距離ではなかったこと、その日が小春日和の心地良い天気だったこともあり、
友人は散歩気分で歩いて向かうことにした。

M君の家までは20分もかからずに着いた。素性の知れない人間がアカの他人の家を
じっくりと観察していれば、通報されかねないこのご時世なので、友人は立ち止まって
見ることは避けて、歩みを極端に緩めてM君の家を観察することにした。
パッと見た家の外観は学校や塾の授業料を滞納している家にはとても見えなかった。
ごくごく普通の建て売りの一軒家である。

しかし、ほんの3歩か4歩だろうか。距離にしてわずか3メートルほど歩いただけで、
その印象はスッ飛んでしまった。小春日和の心地良さとは真逆の光景が友人の目に
飛び込んできたからだ。これまで見たことがないほどに傷を負った車が車庫にはあったのだ。
オカマを掘ったり掘られたり、コスったりコスられたり、というような事故の傷ではない。
何者かがコインや何かで傷をつけたような明らかに人為的な傷である。
そして、その傷は車のフロント付近に固まっており、平凡な日々を壊すには十分な数だった。

そう、M君の家は金貸しからの取り立てにあっていたのだ。

by bigflag | 2006-03-25 22:42 | ・学習塾  

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